千夜一夜、もっと(その3)。2009/02/10 01:13:01

・バーンスタイン/NYP
久々に聴いたけど、やっぱりすごい。
NYP時代のベスト5の一角を間違いなく担う名盤。
NYP時代のマーラーやガーシュウィンが今でも国内盤で現役なのは嬉しいことだし、もちろんそれらの価値だって十二分にあるのは分かってるんだけど、このシェヘラザードだってその列に加えられてしかるべし。

レニー/NYP時代のタイトな録音スケジュールが生み出した、あの「一発録って出し」のテンションって大きな魅力の一つだけど、この音盤はその要素を持ちつつ、それだけに留まらない「深み」(ある意味当時のレニーとしては意外なほどに)が随所で見られて、今なおこの曲の代表盤として挙げても恥ずかしくない。

まずは第1楽章。
ロストロ盤と同じく、大柄なシャリアール王の暴力的な主題。
それに分かりやすく対比されるソロVn.の艶やかさ。
コリリアーノの美音は、カラヤン盤のシュヴァルベとタメ張れる艶やかさ。
この楽章だけでなく、各所で隠し味のように利かされるポルタメントがふうわりと耳を包む。

そして楽器の出し入れに見られる細かいニュアンス!
例えば海原の頂点でのFl.のトリル。
テンポの出し入れも勢い一辺倒ではなく、揺らぎと加速とが見事にバランスを持っていて、曲想に沿った自然さ。

その「自然な」テンポ操作がさらに魅力を爆発させるのが2楽章。
Fg.とOb.のソロで見せるたゆたい。
その後の弦のpizz.での加速と減速(さらに漸強漸弱!)。
Tbの見栄切りのあと、沈み込むTp.ソロ。
まさにパッションの発露としか言いようのない、弦合奏のテンション高い弾きっぷり。
そして終結の加速で見せる鮮やかな身のこなし。

NYP時代のレニーがドライ?
3楽章の潤いを聴け!
細やかで艶やかなレガート。
主要主題のアウフタクトで見せる、息をのむようなため。
後年のレニーが見せる、濃厚な「うた」の端緒がすでにもう見えている。
乾いたTimp.の響きの後にくる再びのアウフタクトの切なさ。
チェロのメロディーの後ろにはレニーの声が明らかに聞こえる。
全てのルバートが曲の呼吸とレニーの気持ちと一体化している、幸せな瞬間。
幕切れの、憂愁すら漂わせる深み。

それが一変。
4楽章で見せる「いつもの」レニー&NYPらしさ!
勢い込んだ冒頭から飛ばしていく。
前に前に、もう我慢できない気持ちがほとばしるかのように、ひたすらムチを入れてかっ飛ばすのに思わずドキドキ。

そのまま難破の頂点まで手に汗握るスピードで追い立てておきながら、シャリアール王の主題でガクッと見栄を切り、現実(=シェヘラザードの語り)へと「自然と」減速していく。
強引さのまったくない、完熟しきったテンポ運び。
最後の2人の融和で見せる、名残惜しい余韻。
「2人の物語は、まだ続くのです。」

あと面白いのは、ストコフスキーほどではないにしても、1~4楽章をほとんど続けて演奏していること。
特に3、4楽章の間は続きが気になるシャリアール王の気持ちそのままのようでツボ。
気を持たせることでじらすロストロ盤とは好対照。

とりあえず、いったんはこれで最終回。(笑
なんかこうやって一気呵成に同じ曲をまとめ聴きするのも面白いな。
その間未聴盤更新が止まるのが難だけど。(苦笑

いつか聴いてみたい(=買ってしまうであろう)その他の音盤たち。
・チェリビダッケ/MPO(ただし正規盤ではなくミーティア盤。PACOでも出てるらしいが音悪いとか。まあ気長に)
・コンドラシン/VPO
・ミュンフン/パリ・バスティーユo
・ゲルギエフ/キーロフ歌劇場o

どうでもいいけど、「シェヘラザード」か「シェエラザード」か。
個人的には前者が好みなのでその表記にしたんだけど。
ま、何語読みがいいかの違いなんだけど。