通勤ミュージック~0903022009/03/02 02:56:40

カラヤン&BPOのMemories盤のベートーヴェン交響曲全集。
最終回は田園と5番。
終わりよければ……というわけでもないけれど、今までの盤に比べれば録音もマシだし、色々興味深い点も多かった。

田園。
さらさらと進んでいく1楽章。
濃厚な味わいこそないけれど、春風のような爽やかさが吹き抜ける。
2楽章はその空気を更に推し進める。
「歌わない」もどかしさはあるけれど、恐らくそういったモノを志向していないのだろうから、それはそれでやり切っているとも言える。
残念なのは3・4楽章。
もっとBPOの合奏力をフル稼働して鳴らしまくるのかと思いきや、フニャッと力の抜けた感じでやや物足りない。
終楽章は1・2楽章と同様の造形だけど、最後の最後で一瞬名残惜しげに幕を引くところが心憎い。

5番。
88年録音ということもあり、音はこの盤が一番クリア。
BPOの機動力が全開しているし、晩年でも衰えを見せないカラヤンの掌握力には感心しきり。

このブログのテーマでもある「Per aspera ad astra.(苦難を乗り越えて栄光へ) 」が本来ぴったりのこの曲。
カラヤンはその流れを強調することより、まるで音の構築物であるかの如く、この曲をさばく方を優先する。

絶対音楽としての1楽章「アレグロ・コン・ブリオ」。
深み、とか精神性を敢えて拒絶するかの如く、ひたすらに鳴りまくる楽器たち。
だからこそ、展開部冒頭のHr.の少し時代がかった見栄切りさえも、とにかく「カッコイイ」。
1楽章が鮮烈すぎて、中間楽章の印象がやや薄いけど、あまり煽らずにずっしりと盛り上げていく終楽章は、重戦車のような迫力があってなかなかの聞き物。

個人的にはフルトヴェングラーのように、自己をこの曲に投影し、色濃く劇性を強調する演奏が好きだけど、カラヤンのスタイルも、ここまで透徹されていれば文句の付けようがない。

クライバーの演奏に近いかもしれないけど、クライバーは滴るようなしなやかさと発火するような激しさを、もっとうまく溶け合わせている感じがする。
その意味ではカラヤンにはまだ「巨匠」の時代の残滓、があるのかも(上記のホルンの見栄切りとか)。