通勤ミュージック~0906272009/06/27 18:00:28

*グールド・コンダクツ&プレイズ・ワーグナー
1. ジークフリート牧歌(オリジナル版/トロント響のメンバー)
2.「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲(グールド編)
3.「神々のたそがれ」~夜明けとジークフリートのラインへの旅(同)
4.ジークフリート牧歌(同)

グールドの指揮とピアノによるワグナー。
最晩年に「これからは指揮者になる」て言ってたグールド。
結局この1曲目のジークフリート牧歌が最後の録音になっちゃったわけだけど、もしもう少し長生きしていたら、何の曲を指揮して(そして録音して)いたんだろうか。

そのジークフリート牧歌。
オリジナルの編成がインティメートな感じを強調する。
テンポはかなりゆっくりめ。
でもべたつくのではなく、むしろカラリとした感じ。
各楽器やライトモティーフの明晰な浮かび上がり方に、さすがの知性が垣間見える。
ピアノ演奏で見せる「驚き」よりも、むしろ温かな感じが伝わってくるのが面白い。
意図をオケに伝えきれていないのか、どことなくギクシャクするところもあるけれど、それさえほのかな人間味に感じてしまう。

残り3曲はさすが?のグールド節。
まずはマイスタージンガー。
ずっしりと重心低く始めておきながら、自然と軽さや愉しさへと移行するそのマジック。
中間部のカノン風のところで出るお約束の「うた」!(笑
対位法的な掛け合いで見せる透明さ。
むしろオケでは埋没している響きが見事に「見えて」いる。

ジークフリートのラインへの旅。
何度か書いていると思うけど、この曲はホント好き。
クナやマタチッチで熱く語ったような神々の響き、というものとはもちろん異質だけど、ある意味「同じ音色」であるピアノだからこそ、ジークフリートとブリュンヒルデの呼びかわしがくっきりと際立つ。
そして何より、ライン川を渡るときのあのライトモティーフの粒立ち!
まさに言葉通りキラキラと、ラインの妖精の歌声が見えてくる。
オケによる「音の饗宴」でないからこそ、その(ある意味)ハッタリに騙されないでこの曲を味わえる。
ピアノで演奏してもこんなに魅力的なんて!

締めのジークフリート牧歌、アゲイン。(笑
もちろん1曲目より前に録音されているわけだけど、ここでグールドがしたこと、そして「ピアノでは」できないと感じたこと、って何だろうと考えて聴くと、1曲目がまた違って聞こえてくるから不思議。