通勤ミュージック~0909182009/09/18 19:55:36

2009年も後半と言うのになんだけど、メモリアルイヤーということで、メンデルスゾーンの交響曲全集を聴く。
もはや鉄板とも言うべき、DGのアバド&LSO盤。
以前から3&4番は持っていたのだけど、全集購入で中古屋へ。(苦笑
ちなみに1番、2番はこの盤が「マイ初演」になる。

*交響曲第1番、弦楽八重奏曲~ スケルツォ、「真夏の夜の夢」序曲、序曲「フィンガルの洞窟」、序曲「静かな海と楽しい航海」

上記の通り、1番はマイ初演。
だけど、すごく耳(と心)にスイスイ入ってくる。
理屈ぬきにいい曲。

この若書きでさえ、もうすでにメンデルスゾーンそのもの。
細胞の隅々まで染み渡っていくような愉楽の響き。
美しく、楽しく、心地よいという事はなんと素晴らしいのか。
深々とした響き。遅めのテンポから見えてくる音の粒立ち。
木管や内声の思わぬ響きにいつも驚かされる。
夢うつつの境をさまようような浮遊感。

悲痛な青春の吐露のような冒頭の主題から心をわしづかみにされる。
アバドらしく、節度を失わない歌わせかたのおかげで、曲がすんなり体に入ってくる。
さらりとした中に静かな歌が溢れる2楽章。
3楽章の抑えた中にも滴る味わい。
そしてキリリと引き締まった終楽章フーガの張力。
モーツァルトの25番を彷彿とさせながら、“疾風怒濤”感よりもあくまで上品さを失わない短調。
古典の品格の上層にしなやかに乗るロマンの歌。

弦楽八重奏のスケルツォ。
管弦楽編曲版のこの曲、大好き。
メンデルスゾーンって、ベートーヴェンとは違う意味で「スケルツォの達人」だと思う。
その端的な証拠とも言える一曲。
いつも愛聴してるのはトスカニーニ盤。

アバドには、確かにトスカニーニのピリリとした肌刺す感じはない。
だけど肩の力の抜けた飄然さ~吹き渡る春風のような~はもしかしたら、この曲の性格的にはむしろふさわしい形なのかもしれない。

好きと言っておきながら、実は恥ずかしながらオリジナルの弦楽八重奏は未聴。
まだまだ勉強が必要ですな。(苦笑

「真夏の夜の夢」序曲。
グイグイと意志的な前進性。だけど暑苦しくはない。
クレンペラーの夢幻感やプレヴィンの穏やかな語り口とも違う、溢れ出す物語そのものを眼前にさらけ出すような喜ばしさ。
とにかく爽快なまでの意志。これはこれでありだと思う。
そして何より、せっかちになるギリギリで踏みとどまる力!
巧みなテンポ操作は、歌うところでグッと落としても自然さを失わない。

序曲だけではもったいない! 他の曲も聴きたい!
……BPOとのライヴ(ソニー盤)も買わないと。

アバドとメンデルスゾーンとの相性の良さを、ずばり見せてくれる「フィンガル」。
陳腐かもしれないけど、音だけで、まさに風景が目に浮かぶ。
これが波しぶきでなければ何なのかと言わんばかりの、寄せては返す弦のさざなみ。

「静かな海と楽しい航海」も同様。
どちらかと言えばちんまりと地味なこの曲が、この上もない上品さと高貴さを持って艶々と輝く。