デ・プロフンディス(=深き淵より)。2010/05/20 18:10:08

*ケーゲル/管弦楽小品集(ケーゲル/ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団)
・アルビノーニ(ジャゾット編):アダージョ
・グルック:歌劇「オルフェオとエウリディーチェ」より“精霊の踊り”
・グリーグ:2つの悲しき旋律
・ヴォルフ=フェラーリ:歌劇「4人の田舎者」より間奏曲
・シベリウス:悲しきワルツ
・グリンカ:歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲
・ムソルグスキー(R.コルサコフ編):歌劇「ホヴァンシチナ」第4幕間奏曲
・フランツ・シュミット:歌劇「ノートル・ダム」間奏曲
・レオンカヴァレロ:歌劇「道化師」間奏曲
・ファリャ:バレエ「恋は魔術師」より“火祭りの踊り”
・エルガー:威風堂々第1番
・ストラヴィンスキー:サーカス・ポルカ

昔から評判の高いケーゲルの小品集。やっと聴いた。

やはりアルビノーニのアダージョが圧倒的。
評判以上にコワイ演奏。身も世もないとは、まさにこのことか。
「悲しい」とか「憤り」とか言った概念すらここにはない。
絶望でさえ希望の対概念でしかないとすれば、ここにあるのは本当の無色透明の虚無。
主旋律の弦よりも、チェンバロとオルガンに耳を奪われる。
まるで鉛の棒を呑まされるように響く低弦。

気持ちゆっくりのテンポ、常に足元を「見えない何か」にわし掴みされているように不安げなフレーズ。

雨降りの出勤中に聴いて心危なくなるのだから、落ち込んで酒飲んでる時なんかに聴いたら、絶対あかん。
それくらい恐ろしい。

威風堂々のテンポ設定が異様過ぎる……しかしそれを必然であるかのように聴かせてしまう恐るべきケーゲル。(汗
繰り返される急加速と急減速。
普通なら、行進曲としてあるまじき姿。
でも受け狙いや効果を期待しているのではなく、何かに取り付かれたような鬼気迫る空気が支配する。
素っ気ないくらいサクサクと進む中間部。

サーカス・ポルカにおける「軍隊行進曲」の引用のグロテクスさ。
シニカルとはこういう事か。

他の曲も逸品。
特に2~5曲目で見せる透き通った美しさは、他では代えがたい。