「清水和音 ピアノの祭典」に行った。2021/11/28 18:55:51



ワケあってサントリーホールの「清水和音 ピアノの祭典」に。
実に3時間半超のコンサート!
ベートーヴェンとショパン独奏、ラフ2台P、チャイコPトリオ、モツPカルテット、シューマンPクインテット、最後は室内楽版動物の謝肉祭。
何と清水氏は全曲演奏。タフ過ぎる!

寝坊&時間勘違いで到着が13時を過ぎてしまい(汗)、冒頭の「月光」は聴けず。
ショパンのノクターン4・5番、バラード1番、英雄ポロネーズから。
これ見よがしの外連味を廃した正攻法なスタイル。
かといって昨今多い「薄味」では決して無く、とにかく音の粒立ちが綺麗。
特に弱音で顕著。

今回のプログラムで唯一聴いたことなかった、ラフマニノフの2台用組曲「幻想的絵画」。
若書きとあってあんまり「ぽく」ないかなぁと思いきや、終曲は「らしく」ってニヤリ。
ラフ好きのくせに聴いてない曲多すぎる。
まだまだ修行が足らんなぁと猛省。

個人的に今日の「私的メイン」だったチャイコの「偉大な芸術家の思い出」。
室内楽そんな得意ではない私が、フランクのVnソナタと並んで音盤けっこう聴いている希な曲(てか大好きなんや……)。
生で聴くのは初めて。
「好きだから」の身びいき差し引いても素晴らしかった。
この曲、なんせピアノのが物言う曲なんだけど、Vn(周防亮介氏)、Vc(水野優也氏)両氏の歌い回しも濃厚で大満足。
この曲にサラサラ薄味とか許せないタチなんで!
もちろん清水氏のリードも素晴らしく、2楽章終盤の追い込み(1楽章メイン主題が戻る前とか)には大興奮。

「室内楽不得手」と書いたけど、続く2曲はどちらも私にしては「よく聴いている」もの。
モーツァルトのP4重奏1番、シューマンのP5重奏。
なんせどっちもレニーのレパートリーなんで。
前者の爽やかな透明感。
後者で迸るパッション(特に1楽章ラスト)。描き分けの妙。

ラスト「動物の謝肉祭」室内楽版。
そういえばオリジナル聴くの音盤含め初。
アルゲリッチ、マイスキー、クレーメル、ツインマーマンらのフィリップス盤いつか買おうと思ってウン10年(苦笑)。
当たり前だがオケ盤よりクリアで見通しが良い。
「愉快さ」は断然オリジナルの方が際立つな。

今日聴いた中でピカイチで素晴らしかったのが「白鳥」。
山ほど聴いているが、水野氏の歌い回しに感嘆。
絶妙な「ため」「揺らぎ」による深々とした呼吸が「手垢」を拭い去る。
ロストロのような「朗々と」ではなく、どちらかと言えばsotto voceだけど、だからこそ耳に心に刻まれた。
拍手!!!

当然だが、アンコールはなし。
4時間弱出ずっぱりの清水氏にこれ以上求めるのは酷ってもんでしょ(笑)。

途中何度か挟まれる司会とのMC。
清水氏ならではの安定の辛口というか斜に構えた感じ、個人的には好きだしある意味サービス精神の発露やと思うけど、誤解されやしないか心配になった(爆)。

2021年2月の #ミチョランマ 消化2021/03/24 23:19:00

今年はミチョランマ消化を積極的に進めているから、翌月にまとめて聴いたやつをこうやって書くことにした。
これをきちんと守れたら、まあ今年は年間で10回は更新できるよね!
(捕らぬ狸の皮算用)

*1・2枚目
リスト:ピアノ作品集
ホルヘ・ボレット

「ラ・カンパネラ」が遅めの深々としたスタイルで好感。
ヴィルトゥオーソ的にゴリゴリやるのも、それはそれでいいんだけど、個人的にはあまり好きじゃあない。
鱒も楽しい演奏だった。
ソナタはまあまあというか、良くも悪くも「中庸」かな……。
やっぱりこの曲は難しい。
アルゲリッチの燃え上がるような演奏が好き。
あと手元にはないけど、ホロヴィッツの若き日のEMI盤が凄まじかった。
いつか入手するかな←

*3枚目
ブリテン:序奏とブルレスク風ロンド、マズルカ・エレジアカ
ストラヴィンスキー:2台のピアノのための協奏曲
バルトーク:2台のピアノとパーカッションのためのソナタ
スヴャトスラフ・リヒテル、ワシーリー・ロバノフ
ワレーリー・バルコフ、ワレンチン・スネギリョフ

何で買ったか全く記憶にない音盤(苦笑)。
好きな曲が一つもない……というか、多分全部「マイ初演」だと思う。

*4・5枚目
ラフマニノフ:24の前奏曲、ピアノソナタ第2番変ロ短調
ウラディミール・アシュケナージ

「好きな作曲家、とか言うてるのに聴いてない曲結構あるやん、を聴こう」企画(長い)。
ジャンルとして声楽・オペラ・室内楽が弱いのは自覚しているけど、独奏モノはそうでもないはずなんだけど……。
ラフマニノフの前奏曲は、はるか昔にト短調(「鐘」の次に有名なやつ)を弾いた事があるけど、今のスキルじゃあ無理だな……(苦笑)。
ソナタは「マイ初演」。
アシュケナージのラフマニノフは、変に捻ったところがなくて個人的には良いと思う。

*6・7枚目
チャイコフスキー:弦楽四重奏曲全集、弦楽六重奏曲「フィレンツェの思い出」(弦楽合奏版)
ガブリエリ弦楽四重奏団
マリナー/アカデミー室内管弦楽団

これも「好きな作曲家、とか言うてるのに聴いてない曲結構あるやん、を聴こう」企画(だから長いって)。
カルテット、恥ずかしながら1番しか聴いた事ないので。
瑞々しさは1番が一番(分かりにくいw)かもだけど……2番も3番も良い曲!
特に2番のがっしりした作りは良いなぁ。
何というか、「室内楽」ぽくはないのだけど。
チャイコフスキーはオペラ全然押さえてないのでいずれ挑まねばなんだよな……。
「スペードの女王」くらいは聴かないとダメだろうな。
あと実はPコンの2・3番も聴いていない。
音盤は持っているのだけど(汗)。

通勤ミュージック~0903162009/03/16 17:37:21

*ラフマニノフ&ハチャトゥリアン:ピアノ協奏曲(カペル、バーンスタイン/NYP<ラフマニノフ> オーマンディ/Pho<ハチャトゥリアン>)

M & Aのライヴ盤。
当初はレニー目当てにゲットした音盤で、実はカペルを聴くのは初めてだけど、文句なしに素晴らしい。
音の悪さを超えて伝わってくるその存在感!

まずはラフマニノフ。
自作自演を想起させるハイスピード。
ひたすら胸のすくような、堅牢なタッチ。

音数が多く、下手をすると響きが濁ることも多いこの曲が、まるで書き写せるくらいに明晰に鳴り渡る。
かといってメカニックなのではなく、燃え上がるようなテンションを持ちつつも決して崩れないのが凄い。

ゆえにむせび立つようなロマンは当然ながら控えめ。
例えば2楽章はウェットな情感には乏しいかもしれないけれど、さらりと駆け抜ける中に、微かな孤独感を感じさせるのが絶妙。

3楽章では、あの第2主題の前に(多くの演奏で行われる)パウゼを一切置かずに突入する。
そしてそれに続く主題を、つぶやくように歌うその寂しさ!

しかし、同じ主題を再現部ではたゆたうように奏で、一転、コーダでは晴れやかに朗々と歌い上げる。
当時28歳(!)という若さなのに、その使い分けの巧みさに感心させられる。

更に華を添えるのがレニーの棒。
一気呵成な盛り上げでカペルをサポート。
音が悪いのが惜しまれるけど、そんなことすら忘れる。
1楽章再現部直前や終結での、タッグの絶妙なハマり具合にはひたすら興奮してしまう。
3楽章の勢い込んだ加速や気持ちをぶつけまくった終結部も最高!
CBSのスタジオ盤2種より、はるかに熱い!

「ロマン滴る(不健康な)ラフマニノフ」ではないけれど、このほとばしる情熱には、大満足。
「レニーびいき」(苦笑)を差し置いても、久々にこの曲で名演に巡り会えたことが、とにかく嬉しい。

そしてハチャトゥリアン。
「ハチャトゥリアン=カペル」と言われるようになったゆえんの曲だけに、まさにお手の物。
カペルのパワーとテクニックが、ラフマニノフ以上にツボにはまっている。
荒ぶるリズムや和音、ピアノが打楽器のように響く。
しかし決して汚くなることなく、豪壮無比にザクザクと進む。
鍵盤というフィールドを、縦横無尽に駆けまくる。

オーマンディのサポートもさすが。
むやみに熱くなることこそないものの、オケ、ピアノともに見せ場を一々心得た棒裁きが心憎い。
やっぱ職人やわー。

安住しない、こと。2009/01/30 03:01:28

*ストコフスキー・スペキュタクラー(2枚目)

1.R.コルサコフ:「ロシアの復活祭」序曲(CSO)
2. 同:交響組曲「シェヘラザード」(RPO)
3. ラフマニノフ:ヴォカリーズ (アメリカso. モッフォ<S>)

1枚目のバッハ・ヘンデルに比べるとおとなしく感じてしまうけど、まあ原曲の管弦楽法の味付け自体が全然違うんだから当たり前。(苦笑

ストコフスキーの「シェヘラザード」は、あのやりたい放題のLSOとの録音はずっと前から愛聴していて、自分的にはこの曲の3大名盤の一つ(あとはロストロポーヴィッチとレニー!)。
RPO盤は「LSO盤よりは穏やか」みたいな評があちこちでされていて、気にはなっていたけどやっと聴くことができた。

確かにLSO盤よりは楽器付加とか少なくて、コッテリ感は減ってる(それでも普通の演奏より遥かにあるけど……。2楽章で出てくるシロホンはやっぱりツボ。笑)。
その意味では「意外に」この曲の(「面白さ」や「楽しさ」よりも)美しさを素直に描いているとも言える。
特に3楽章でそれが顕著。

ただ、そういった「変化」が、普通ならそうである「晩年ゆえの抑制」だとはボクには思えない。
LSOとの録音から約10年しかたっていないから、という時間の問題だけでなく、「前と同じことはしたくない!」という強い意志の現れだからこそ、じゃないか?

単に演奏そのものの好き嫌いでいえば、断然LSO盤の方だけど、このRPO盤も、一見(以前より)大人しく見える表情に「芸術の敵は安住」とも言わんばかりのストコフスキーの思いがにじみ出ているようで捨てがたい。

例えば、1・2楽章と3・4楽章を続けて演奏する新解釈。
特に前者は効果的で、何だかむしろこうする方が自然なのでは、という気にさえさせられる力を持っている。

……ていうか、やっぱり「シェヘラザード」ってよくできた曲だなぁと関心しきり。
確か全部で10種も持っていなかったはずだけど、色々引っ張りだして聴きたくなってきた。
そんな気にさせる力が、ストコフスキーにはやっぱりあるんだと思う。

「ロシアの復活祭」ももちろんカラフルで申し分ないけれど、むしろフィルアップ的な「ヴォカリーズ」が聴きもの。
ドゥベンスキー編曲の管弦楽伴奏つきソプラノ独唱版。
アンナ・モッフォの抑えた歌唱にそっと寄り添うようにオケをつけるストコフスキー。
この繊細さもまた彼の一つの一面。