通勤ミュージック~0906042009/06/04 22:53:05

*ベートーヴェン:交響曲第7番・第8番(ケンペ/ミュンヘンpo)

いよいよケンペの全集も最終回。
ずっとベートーヴェン漬けというのも、たまにはいいよね。
……でも次の「もっとベートーヴェン」はちょっと間空けたいけど。(苦笑

7番の1楽章序奏、かなりゆっくり。
しかし全く弛緩しない。
不安な手探りでもなく、ワクワクを抑えているような伸びやかさ。
そう言えば4番の最初にもよく似た空気を感じた。
主部4小節目、主旋律へのふわっと浮かぶような入り。
絶妙な呼吸にこちらの体も反応する。
かと思えば、コーダの391小節目からグッとテンポを落とし、その後自然にクレッシェンドと共に加速する心憎さ!
2楽章の深く大きな刻み。
グッと見栄を切ってテンポを落としても、色濃いロマンより、あくまで「自然さ」がにじみ出ている。
3楽章の、ただリズムをきちんと刻むことで生きる躍動と静かな迫力。
それによって、トリオの清々しさが涼風のように生きる。
そして終楽章。
ここまでと一転、速めのテンポが痛快。
でも、緊張感や刺激的なまでの官能性(クライバー!)や扇情ではない。
勢い込んだTp.が引っ張っていく、とにかく「自発・内発」としての音楽。
コーダの自然な加速、低弦のゴリゴリ感。

充実感たっぷりでありながら、渋め満開というわけでもない、絶妙な気持ち良さ。
全集内でも1・2を争う名演だわ。

8番は7番との比較で言われる「小ささ」を前面に出した感じ。
冒頭から、ふうわりと穏やかに進める。
諧謔性を出すよりも、淡々と誠実に、と言った感じだろうか。
2楽章の最後の「大笑い」も、ホントに控えめ。
3楽章も春風駘蕩、と言った趣。
全体にデュナーミクの幅も小さめで、「小回りの利く」スタイル。

面白いのは、これまでとは違う1楽章のリピート。
大抵の曲で割愛されていたのに、ここではなぜか採用されている。

さて、全曲聴いた感想を簡単に。
以前「全集考」でも書いた“平均値”という観点からすると、すごく高評価。
全曲にわたって、過度な熱狂や興奮というよりも、誠実さと自然さが解釈のキモになっていると感じる。
その意味から、「マイ初演」としても最適。
録音もステレオ初期としては不満のないレベルだし。

もちろん8番のところで書いたリピートの問題や、エロイカのTp.など、現代の解釈からすれば問題視されるところもあるのかもしれないけれど、やはりそのオーソドックスさは決して今でも色あせたものではないと思う。

中でも、特に印象強いのは3番・5番・7番。
この3曲って、まさに「イケイケドンドン」で解釈する事も可能だし、その線で圧倒的な説得力と感動をくれる音盤だってないワケじゃない。
でもケンペの場合、じっくりと腰を据えて曲に向かい、きちんと音化することで「何度でも聴きたくなるような」音像を作ることに成功している。
しかも、決してテンポそのものだって遅いワケじゃないし。
とにかく、必要にして十分。

無理に(笑)難を言うなら、「田園」にもう少し瑞々しさがあれば……とか、第9のソロくらいかな。
あとは序曲がもう少し入っていれば文句なしかも。(笑

「1Q84」とシンフォニエッタ。2009/06/11 00:34:23

村上春樹氏の新作「1Q84」効果でヤナーチェクの「シンフォニエッタ」が売れてるとか。
そう言えば先日行ったタワレコでも特設コーナーが出来ていた。
浅田真央ちゃんが使ったことで人気が出た「仮面舞踏会」(ハチャトリアン)なんかと同様、こういう「ニワカ」現象に眉をひそめるクラシック音楽ファンもいるのだろうけど、個人的には大歓迎。

以前「のだめ」について書いたことと結論は同じなんだけど、間口を広げて、多くの人にクラシック音楽は「特別」なものではないんだ、ということを知ってもらうことこそ、生き残りの近道だと思う。
まあ、「自分の掌中の玉」で置いておきたい、なんて人にとっては迷惑なのかもしれないけど。(苦笑

村上氏と言えば、「ノルウェーの森」にブラームスのピアノ協奏曲第2番(しかもバックハウス&ベーム/VPO盤!)を聴くシーンがあったなぁ。
映画化されても、ちゃんと使われるのかな。

狩猟日記~0906162009/06/16 22:35:23

久しぶりの中古盤漁り。
分量的には割と控えめ。(苦笑

・ベートーヴェン:交響曲&ピアノ協奏曲全集(クレンペラー/PO、バレンボイム)
・ムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」ほか(ホロヴィッツ)
・ストラヴィンスキー:「春の祭典」「ペトルーシュカ」(コリン・デイヴィス/ACO)
・チャイコフスキー:交響曲第3番(スヴェトラーノフ/ロシア国立so.)

ベートーヴェンは、恒例EMIの格安ボックス。
あのシリーズはホント罪作りだわ。(タメイキ。
そしてまた「もっとベートーヴェン」シリーズに未聴シリーズが増える。(苦笑
いや、次に聴くのはコンヴィチュニーってもう決めてますから。

「展覧会」は先日のアシュケナージもまだ聴いていないのだけど、ピアノ版の手持ちをもう少し充実させたいので。
そうなるとホロヴィッツを外すわけにはいかないよね、てことで。

ハルサイはそんなにたくさん持ってないし、特に集めようとも思っていないのだけど、この音盤はすごく良いという人が多く、気になっていた。

スヴェトラーノフの東京ライヴはなぜか2・3番だけ未所有。
これで残すは2番のみ(しかし2番だけでCD1枚って、もったいない。苦笑)。

通勤ミュージック~0906202009/06/24 01:29:52

*ブラームス&シベリウス:ヴァイオリン協奏曲(ヌヴー、ドヴロウェン&ジュスキント/PO)、ラヴェル: ハバネラ形式の小品、スカラテスク:バガテル(ヌヴー、ジャン・ヌヴー)

言わずと知れた名盤……だけど初聴。
と言うか、ヌヴー自体が初聴。(汗
聴いたのはオーパス蔵。

個人的に、ヴァイオリニストは女性に好きな人が多い。
ムターしかり、キョンファしかり。
……ずいぶん対照的なタイプだけど。(苦笑

ヌヴーの演奏は、情熱への耽溺と旋律への清冽さが、矛盾せずに共存している。
両曲とも、カデンツァやアインガング(指ならし)ではむせ返るような熱気をそのままぶつけてくる。
でも、オケと合わすところでは決して放埓にならない。
ある種の「枠」の中で、きちっと引き締まった「うた」が奏でられる。

ブラームスの2楽章がまさにその典型。
ぴんと背筋の張った歌い方で、すごく心がこもっている。
ただ、3楽章はもう少し熱気のほうが前面に出ても……という感じがした。
イッセルシュテットとのライヴ盤(これまた有名)は、もっと「熱い」と言う人が多いので、いずれそちらも聴かなきゃ。

この音盤単体で言えば、シベリウスの方が名演かも。
何と言っても、先述した「熱気と知性の共存」がより高度に結晶化している。
この曲は、ボク的には「マイ初演」であるキョンファの録音を超えるものはいまだないのだけれど、それとは違う方向性、ということで評価大。

それこそキョンファだとほとんどケンカ腰というか、啖呵切るようにスリリングな3楽章も、腰を据えてじっくりと盛り上げていく。
一聴した時こそ、テンポ運びも含めて「大人しいかなぁ」なんて感じたのだけど、繰り返し聴くたびに、じわじわと熱を帯びながら終結へ向かう音楽作りの説得力にやられた。

フィルアップの2曲はコンチェルトとは違うヌヴーの一面が垣間見える感じ。
艶っぽいというか、色っぽいと言うか。
曲想に合わせてのことだとは思うけど、その違いもまた興味深い。

もう少し長生きしてくれたら、ステレオで名盤を残してくれたんだろうな……。
チャイコンとか聴いてみたかったなー。

通勤ミュージック~0906272009/06/27 18:00:28

*グールド・コンダクツ&プレイズ・ワーグナー
1. ジークフリート牧歌(オリジナル版/トロント響のメンバー)
2.「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲(グールド編)
3.「神々のたそがれ」~夜明けとジークフリートのラインへの旅(同)
4.ジークフリート牧歌(同)

グールドの指揮とピアノによるワグナー。
最晩年に「これからは指揮者になる」て言ってたグールド。
結局この1曲目のジークフリート牧歌が最後の録音になっちゃったわけだけど、もしもう少し長生きしていたら、何の曲を指揮して(そして録音して)いたんだろうか。

そのジークフリート牧歌。
オリジナルの編成がインティメートな感じを強調する。
テンポはかなりゆっくりめ。
でもべたつくのではなく、むしろカラリとした感じ。
各楽器やライトモティーフの明晰な浮かび上がり方に、さすがの知性が垣間見える。
ピアノ演奏で見せる「驚き」よりも、むしろ温かな感じが伝わってくるのが面白い。
意図をオケに伝えきれていないのか、どことなくギクシャクするところもあるけれど、それさえほのかな人間味に感じてしまう。

残り3曲はさすが?のグールド節。
まずはマイスタージンガー。
ずっしりと重心低く始めておきながら、自然と軽さや愉しさへと移行するそのマジック。
中間部のカノン風のところで出るお約束の「うた」!(笑
対位法的な掛け合いで見せる透明さ。
むしろオケでは埋没している響きが見事に「見えて」いる。

ジークフリートのラインへの旅。
何度か書いていると思うけど、この曲はホント好き。
クナやマタチッチで熱く語ったような神々の響き、というものとはもちろん異質だけど、ある意味「同じ音色」であるピアノだからこそ、ジークフリートとブリュンヒルデの呼びかわしがくっきりと際立つ。
そして何より、ライン川を渡るときのあのライトモティーフの粒立ち!
まさに言葉通りキラキラと、ラインの妖精の歌声が見えてくる。
オケによる「音の饗宴」でないからこそ、その(ある意味)ハッタリに騙されないでこの曲を味わえる。
ピアノで演奏してもこんなに魅力的なんて!

締めのジークフリート牧歌、アゲイン。(笑
もちろん1曲目より前に録音されているわけだけど、ここでグールドがしたこと、そして「ピアノでは」できないと感じたこと、って何だろうと考えて聴くと、1曲目がまた違って聞こえてくるから不思議。