通勤ミュージック~0812192008/12/19 18:30:52

*ベルリオーズ:幻想交響曲(クリュイタンス/パリ音楽院管弦楽団)

1964年5月10日東京文化会館での録音(Altus盤)。
POとのスタジオ盤とは違う熱演でつとに有名。

20年くらい前にはKING系のSevenSeasで出ていた。
高校時代に友人が持っていて、借りて聴いた記憶がある。
自分のモノとしてきちんと聴くのはそれ以来。(時がたつのは速いねぇ。

改めて聴くと、もちろん熱演であることは事実だけど、「我を忘れた」タイプではないことに気づく。
プログラム・ミュージックであるこの曲に対し、「1人称の解釈」でなく「3人称」として臨んでいるのが大きな特徴、だと感じた。

大事なのは「客体」ではなくて「3人称」なこと。
表題音楽性をのっけから無視して臨むのが「客体」なら(それはそれで貫徹しているならありだと思う。スキではないけど……苦笑)、「物語」の中に没入するのではなく、一歩引いて「語る」視点を持っているのが「3人称」なのかな、と。

そこばかり注目されがちな、4・5楽章の燃え上がりもそう。
もちろんラストのコーダなんて、Tb.が落ちるほどの加速だけれど、それは「語り口」に熱がこもったからであって、決して“髪振り乱して”という感じではない。
同じ「熱演」でもミュンシュ/パリ管との大きな違いはそこ。
……ちなみにミュンシュ盤は大好きですよ。(まあボクの趣味から想像付くでしょうけど。苦笑

それこそがクリュイタンスならではのニュアンス(エスプリ?)。
ちょっとドライな録音からも滲み出る、あまりに魅惑的な、「粋」なんだと思う。
その意味では、この曲の「痛さ」(=ストーカーさ。笑)は払拭されているとも言える。
(そう考えると、ホントの意味で一番コワイのはクレンペラー盤だな)

あと注目すべきは、クリュイタンスの音像づくりの立派さ。
カラリとしたオケの音を生かしつつ、例えば1楽章序奏最後のファゴット強調みたいに、思わぬところで耳を引かせる。
4・5楽章の低弦・Timp.のここ一番での強奏もその流れでとらえるべき。

そして忘れちゃいけないのがアンコールの2曲の完熟っぷり。
「古い城」の惻々たる寂しさ。
その中に潜む品のあるセクシーさ。
「ファランドール」の完全無欠のアッチェルランド。
むしろ押し出し強く堂々と始まるのに、気づけば魔法のように加速していく。
わずか3分半の奇跡、いや永遠の3分半の奇跡。
こんな演奏できるなら、寿命が1年くらい縮んだって構わない。

コメント

_ 謙一 ― 2008/12/20 01:54:36

このライブCDは魅力があって、何度も聴くんですよ。
ラストは金管が疲れてるようなので完全ではないのに・・・。

スタジオ録音のおとなしいクリュイタンスをLPで慣らされたクリュイタンス像はこのCDで壊れましたね。

ミュンシュの方が好きなのに、このCDに手が伸びます。
不思議。

_ みっふぃーまにあ ― 2008/12/20 02:09:20

to 謙一さん。

ホント、魅力的な音盤ですよね!
実はラヴェルのライヴ盤も買っているので、次はそれを聴こうかと思っています。
こちらはオケも同じなので、スタジオ盤との比較がより楽しみです。
スタジオ盤はボクのラヴェルのデフォルトですが……。(微笑

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