通勤ミュージック~0904032009/04/03 00:43:01

*グリーグ&シューマン:ピアノ協奏曲ほか(リパッティ、ガリエラ&カラヤン/PO)

昔から名盤の誉れ高い録音だけど、初聴き。
入手したのはオーパス蔵盤。

リパッティはソロを少し聴いたことがあるくらいで、何とはなしにリリカルなイメージを抱いていたけれど、それだけじゃない!
詩情を備えながら、ここ一番で見せるたゆたうようなロマンが濃い。

特にグリーグが素晴らしい。
もう初っ端のカデンツァからグイグイ引き込まれる。
最低音のAが、こんなに心を打つなんて!

随所で見せる、堂に入った自在なルバート。
自在に羽ばたきながら、決して放埒に見えない絶妙なニュアンス。
オケとの対話をきちんと保ちつつも、自分の世界をしっかりと作り上げてるのがすごい。

実は「この曲って、何となく、浅薄で単純だよなぁ」とずっと思っていた。
……それが何という無知だったことか。(汗

旋律もリズムも、まるでキラキラとこぼれる宝石のような美しさに溢れている。
移り変わる表情に魅了される1楽章。
深い静けさと内省に満ちた2楽章。
単なる舞曲が、より高みを目指す気高さへと昇華する3楽章。

この録音がマイ初演だったなら。
もっと早くその魅力に気付いたのに。

ガリエラのまっすぐに燃え上がったサポートも心憎い。
特に終楽章では、勢い込んだオケの加速と、流れるように歌い上げるリパッティとが、溢れる音模様をあやなす。

まさに、音の古さを超えた名演。
出会えたことに深く感謝。

一転、シューマンは若干物足りない。

リパッティが悪いのではなく、カラヤンのサポートが素っ気ないというかよそよそしいというか。
POも、グリーグと同時期の録音とは思えないほど味気ない。
こういう「単に表面を磨いた」美しさなら、今どきのもっと音の良い録音になんぼでもある。

しかし、リパッティのロマンにあてられたかのごとく、段々とカラヤンのテンションが上がっていくのは面白い。
3楽章では最初とは別人のような趣きで、なかなか刺激的な掛け合いを繰り広げている。

フィルアップに収められたリパッティの自作、コンツェルティーノはチャーミングな佳曲。
ライナーにもあるように、バッハの影がそこはかとなく感じられるのもまた良し。

サヴァリッシュ/SKDのシューマン。2009/01/11 01:11:37

またまた年末買った全集から。
やっぱね、「買ったらすぐ聴く」が未聴盤を減らす良策の一つだと思いますわ。(笑
と言いつつ、正確には4番以外は持っていたので「未聴」とは少しニュアンス違うんだけど。(苦笑

ほかの3曲もずいぶん久しぶり。
て言うか、あまり面白みない印象があったので。
ところが……改めて聴いて猛省。
そりゃ名盤って言われるだけのことあるわ!

確かに折り目正しい生真面目さが前面に出ていて、手練手管は全くといっていいほどない。
「春」の終楽章とか淡々としすぎかもしれない。
2番なんかは、どうしても曲を支えきっていない感じもする。

でも何がすごいって、全曲にわたって「楽器」の音を感じさせないこと(ショルティ盤とは対極か?苦笑)。
どのパートも、楽曲の血肉となって不可欠の存在になっている。
「そこにその音がある」意義がある。

それを一番象徴しているのがTimp.。
ゾンダーマンの演奏がまるで背骨のように各曲、そして全集全体を引き締める。
奏法も音も存在感も全てひっくるめて、まさに理想のTimp.。
特に「ライン」は、もう曲の流れに身を委ねているだけで幸せすぎる!

サヴァリッシュも、「生真面目」って書いたけど、今回初聴きの4番では終楽章でちょっぴり大見得切っててなかなか良い。
でも自己主張がはみ出る感じではなく、最後もあまり加速せず、どっしりと締めくくる。
ほかの曲だって、明晰な統率力が光ってる。

ルカ教会の残響豊かな録音がすごくふくよか。
SKDの音の伽藍、まさに大聖堂を仰ぎ見るような感覚。
「全集」としての平均値は凄まじく高い。
何回も何回も聴いても飽きないし。

……しかし、聴くこちらの立場や年齢、経験値が変わっているのもあるけど、ホント学生時代って、有り体に言えば爆演・熱演タイプの演奏や音盤にひかれ過ぎだったなぁ。

もちろんそういった演奏は今だって好きだし(無個性よりははるかに良い)、熱い感動をくれることも多いけど、最近はどちらかといえば「旨味」や「職人芸」的なものに強く引き付けられるのを感じる。

ケンペやクーベリックがすごく好きになってきてるのがその証かな。
しかもこの2人、実演では燃えるとこが共通しているし。(笑

通勤ミュージック~0812012008/12/01 17:33:42

*シューマン:交響曲全集、序曲・スケルツォとフィナーレ、序曲「ジュリアス・シーザー」(ショルティ/VPO)

ただいま出張で広島に来ております。
というわけで正確には「出張ミュージック」。(笑。

快速・クリア・爽快……「過ぎる」くらいの演奏。
先日も書いた、シューマンに必須の「ファンタジー」は存在しない、というか求めようとされていない。
シューマンの音が骨組みまで露わにされている。
ある意味残酷なくらい。

決して好きなタイプの演奏ではないけれど、みなぎるガチンコの緊張感(ほとんどケンカ腰)は凄い。
VPO相手でも(だからこそ?)一歩も引かないショルティの意気込みは「よーやるわ」の一言(録音年代を考えればなおさら)。

意外に2番が良い。
変な「意味」を持たせないことが強みになって、袋小路から逃れるのに成功している。
もちろん3楽章には何の影も見えないし、4楽章の勝どきもあまりに単純だけれど(低弦の凄まじいゴリゴリ弾きっぷり!)、一つの解釈としてはありかな、と。

「春」「ライン」もどこまでも朗らか。
鳴りまくる金管、ピッチピチのリズム。
比して木管はスカスカに聴こえるけど、これはシューマンの音をそのまま表出しちゃうからで、仕方なし。

しかし、さすがに4番はキツイ。
暴力的までな音圧にちょい引き。
他の曲ではまだ妥協できた彼の解釈も、さすがにこの曲(まさにファンタジーのかたまり)では「勘弁してくれ」と言いたくなる。

フィルアップの序曲はまあまあ。
ジュリアス・シーザーの峻厳さがちょっと「らしくなくて」ニヤリ。

通勤ミュージック~0811252008/11/25 17:30:24

* シューベルト:交響曲第8番 「未完成」、シューマン:ピアノ協奏曲(アルゲリッチ、ミュンフン/フランス国立放送o.)

2001年パリでのライヴ、エイズ撲滅のチャリティコンサート。
以前「狩猟日記」で書いたとおり、シューマンのピアノコンチェルトに一聴惚れ(?)して購入した、タワレコ限定盤。

シューマンはとにかくすごい。
この曲、古今のピアノ協奏曲の中でもボクの好きなベスト3に入るんだけど、これまでいくつか聴いてきた音盤の中でも屈指の名演。

期待通りに燃え上がるアルゲリッチのテンペラメント。
天駆ける駿馬のように鍵盤から音が立ち上る。
特に終楽章の目くるめくような音の奔流には息をのむしかない。

ただ、敢えて欲を言えばもう少しシューマンに不可欠な「ファンタジー」が欲しいところ(それは例えば、コルトーに溢れかえっているような)。
それを突き詰めるタイプの演奏ではないから、無い物ねだりというかわがままな希望かもしれないが。

シューマン目当てだったけど、未完成も良くて驚き。
考えてみれば、「指揮者」ミュンフンの音盤って、これがボク初めてだわ。

考え込みつつゆっくりと進む、今どき珍しい(古い?)スタイルの演奏。
特に1楽章の不吉なまでの沈思黙考っぷりは、非常に共感。
やっぱシューベルトはこうでないと!
どうでもいいけど、それこそ「8番」って書くと古い、て言われちゃうのかなぁ。(苦笑