通勤ミュージック~0901272009/01/27 16:33:43

*ストコフスキー・スペキュタクラー

RCA 2 in 1シリーズ。まずは1枚目から。

1.無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第3番~プレリュード(バッハ~ストコフスキー編)
2. 同第2番~シャコンヌ(同~同)
3. 管弦楽組曲第3番~アリア(同~同)
4. 小フーガ ト短調(同~同)
5. 組曲「水上の音楽」(ヘンデル)
6. 同「王宮の花火の音楽」(同)

バッハはLSO、ヘンデルはRCAビクター響。

もうプレリュードから(いい意味で)映画音楽のノリ。
今ならさしずめゲーム音楽か。(笑
楽しく明るく歌ってルンルン。

それがシャコンヌで一変。
あたかも愁嘆場を演じるかのような大げさな身振りの中に、甘美な色気がムンムンと香り立つ。
先日のイエペスのように、内へ内へと向かうような内省的な空気とは全く違って、放射されるエネルギーに満ちているが、これはこれで(バッハが求めているものとは違ったとしても)極められた「何か」が心に響いてくる。

もちろん「好き嫌い」という概念は否定しないし、音楽を楽しむ上で重要な様子だとは思うが、結局のところ、その「何か」を伝え切れているか、が自分の中では大きな評価基準のような気がする。

「彼(=バッハ)が私の編曲をどう思うか。それは私の死後の運命がどうなるか分からないけど、とにかく行った先で彼に会ってみないことには何とも言えない」(by ストコフスキー)

コッテリと歌い抜くG線上のアリア。
ド派手な金管のトリルで飾られる小フーガ。
とにかく、やり切ろうとする信念の説得力に脱帽!

ストコフスキーのバッハは、チョコフィルのライヴ盤を持っていて、あれも凄い(特に「パッサカリアとフーガ」)。
ただ選曲は当音盤の方がバラエティーに富んでいていいかな。

ヘンデルの2曲も十二分に楽しませてくれる。
クーベリック盤のような「威容」こそないけれど(ていうか、そんなもの眼中にない?)、とにかく大らか。

「水上の音楽」では、最初から最後まで、これでもかと言うくらいにメロディーに合わせてスネアドラムを鳴らしまくる。
やっぱり、というか期待通り、というか。

ところが一転「花火」では意外なほど穏やかな表情を見せる。
テンポも全体に落ち着いてゆったり。
もちろん楽器は補強してるけど、序曲で不意に見せる弱音にも驚かされる。
「歓喜」も開始の弦でぐっと抑え、繰り返す度にジワジワと盛り上げる。
しかし最後の金管でもド派手にはならない。むしろ大人。

……やるとしたら、普通逆(水上=穏やか 花火=派手)だよね。(苦笑
その辺の一筋縄では行かないところもまた、「ストコ節」たるゆえんか。

安住しない、こと。2009/01/30 03:01:28

*ストコフスキー・スペキュタクラー(2枚目)

1.R.コルサコフ:「ロシアの復活祭」序曲(CSO)
2. 同:交響組曲「シェヘラザード」(RPO)
3. ラフマニノフ:ヴォカリーズ (アメリカso. モッフォ<S>)

1枚目のバッハ・ヘンデルに比べるとおとなしく感じてしまうけど、まあ原曲の管弦楽法の味付け自体が全然違うんだから当たり前。(苦笑

ストコフスキーの「シェヘラザード」は、あのやりたい放題のLSOとの録音はずっと前から愛聴していて、自分的にはこの曲の3大名盤の一つ(あとはロストロポーヴィッチとレニー!)。
RPO盤は「LSO盤よりは穏やか」みたいな評があちこちでされていて、気にはなっていたけどやっと聴くことができた。

確かにLSO盤よりは楽器付加とか少なくて、コッテリ感は減ってる(それでも普通の演奏より遥かにあるけど……。2楽章で出てくるシロホンはやっぱりツボ。笑)。
その意味では「意外に」この曲の(「面白さ」や「楽しさ」よりも)美しさを素直に描いているとも言える。
特に3楽章でそれが顕著。

ただ、そういった「変化」が、普通ならそうである「晩年ゆえの抑制」だとはボクには思えない。
LSOとの録音から約10年しかたっていないから、という時間の問題だけでなく、「前と同じことはしたくない!」という強い意志の現れだからこそ、じゃないか?

単に演奏そのものの好き嫌いでいえば、断然LSO盤の方だけど、このRPO盤も、一見(以前より)大人しく見える表情に「芸術の敵は安住」とも言わんばかりのストコフスキーの思いがにじみ出ているようで捨てがたい。

例えば、1・2楽章と3・4楽章を続けて演奏する新解釈。
特に前者は効果的で、何だかむしろこうする方が自然なのでは、という気にさえさせられる力を持っている。

……ていうか、やっぱり「シェヘラザード」ってよくできた曲だなぁと関心しきり。
確か全部で10種も持っていなかったはずだけど、色々引っ張りだして聴きたくなってきた。
そんな気にさせる力が、ストコフスキーにはやっぱりあるんだと思う。

「ロシアの復活祭」ももちろんカラフルで申し分ないけれど、むしろフィルアップ的な「ヴォカリーズ」が聴きもの。
ドゥベンスキー編曲の管弦楽伴奏つきソプラノ独唱版。
アンナ・モッフォの抑えた歌唱にそっと寄り添うようにオケをつけるストコフスキー。
この繊細さもまた彼の一つの一面。